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「猊下! 混戦故はっきりと分かりませんが、少なくとも賊の数は百を下りません! そ、その上っ……ほぼ全員が覚醒者だと思われます! いつ突破されてもおかしくない状況でございます!」
「なっ……!?」
ドサッ―――
信じられない報に、ザナドゥは思わず腰を抜かして尻餅をつく。
町の火の手は聖騎士を聖堂から遠ざけ、戦力を分散させるための賊による陽動だった事も知らされ、全ては悪鬼の掌にあると早々に悟らざるを得なかった。
「猊下、お気を確かに!」
(おのれおのれおのれぇっ! カビの生えた下郎めがぁっ! あれは……あれだけは始末せねば……っ!)
「儂はここを離れるが、神塔への侵入だけは何としてでも阻止するのだっ! 叶わぬのなら……入口で待ち伏せ、出てきた者全員を主への供物とせよ! いいか、全員だ! 貴様らは絶対に中に入ってはならんぞ!」
「ぞ、賊の狙いは宝物庫では―――」
「二度言わせるでない! 塔だ! よいな!」
「は、はっ!」
無意識に噛んでいた親指の爪の先を噛みちぎり、ザナドゥは聖騎士に支えられて自らの居室を後にする。
程なくして賊が聖堂を襲撃、大神官が聖堂から退去したという噂は聖都中に広がり、火の手の上がる聖都はたちまち大混乱に陥った。
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