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高祭壇に上り、剣の前で跪く。
事前に言われていた通りに跪いて手を組み、目を閉じて静かにその時を待った。
お父様はあっという間に終わると言っていたけれど、もうこの時点で私には長いと思える。
神官様が神に捧げる祝詞を朗々と唱えている間、私はそれに耳を傾けることはせずにお屋敷の事を考えていた。
無心になれと言われたけれど、そんなのできっこ無い。
「大いなる神アズガイアの名の下に、ジェリトリナ・ル・ナイトレイに祝福を!」
―――祝福を!
突然大きな声が聖堂に木霊し、びっくりした私はつい体を強張らせてしまった。
こんな弱虫な聖女様はどこにもいないわ。
自分で言っておいて可笑しくなってくる。
もう終わったのかな?
どこにも変わったところは無いと思うけど……
目をつむっているから周りの様子は分からないし、神官様が良いと言うまで目を開けちゃダメ……―――
なんだか体がぽかぽかとしてきた。
だんだん暑くなってくる。
緊張とか、そういうのじゃない。
まるで、炎が徐々に近づいてくるような。
これは、絶対におかしい。
普通じゃない。
その時、私の頭の中に奇妙な声が響く。
《 其方、器足りえず 》
「え?」
その声と共に私の身体を何かが通り過ぎる感覚がし、全身に燃えるような熱さが広がった。
「きゃぁぁぁっ! あつい、あついよっ!」
身体の中から焼かれるような痛みに私は悲鳴を上げ、ジリジリと皮膚が焼けていく感覚に耐えかねて転げまわった。
これが儀式の一環なのだとしても、この痛みに我慢なんてできない。
「ひっ、ひっ」
息を吸うのも苦しく、この痛みがいつまで続くのかと考える余裕もない。
助けを呼ぼうと辛うじて焦点を合わせた時、視界に入った自分の手を見て私は絶句した。
手が真っ黒だった。
「な……に……?」
私は周りの様子を知ることなく、意識を手放した。
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