#2 World of Ruthless

2/4
前へ
/49ページ
次へ
 高祭壇に上り、剣の前で跪く。  事前に言われていた通りに跪いて手を組み、目を閉じて静かにその時を待った。  お父様はあっという間に終わると言っていたけれど、もうこの時点で私には長いと思える。  神官様が神に捧げる祝詞を朗々と唱えている間、私はそれに耳を傾けることはせずにお屋敷の事を考えていた。  無心になれと言われたけれど、そんなのできっこ無い。 「大いなる神アズガイアの名の下に、ジェリトリナ・ル・ナイトレイに祝福を!」  ―――祝福を!  突然大きな声が聖堂に木霊し、びっくりした私はつい体を強張らせてしまった。  こんな弱虫な聖女様はどこにもいないわ。  自分で言っておいて可笑しくなってくる。  もう終わったのかな?  どこにも変わったところは無いと思うけど……  目をつむっているから周りの様子は分からないし、神官様が良いと言うまで目を開けちゃダメ……―――  なんだか体がぽかぽかとしてきた。  だんだん暑くなってくる。  緊張とか、そういうのじゃない。  まるで、炎が徐々に近づいてくるような。  これは、絶対におかしい。  普通じゃない。  その時、私の頭の中に奇妙な声が響く。 《 其方、器足りえず 》 「え?」  その声と共に私の身体を何かが通り過ぎる感覚がし、全身に燃えるような熱さが広がった。 「きゃぁぁぁっ! あつい、あついよっ!」  身体の中から焼かれるような痛みに私は悲鳴を上げ、ジリジリと皮膚が焼けていく感覚に耐えかねて転げまわった。  これが儀式の一環なのだとしても、この痛みに我慢なんてできない。 「ひっ、ひっ」  息を吸うのも苦しく、この痛みがいつまで続くのかと考える余裕もない。  助けを呼ぼうと辛うじて焦点を合わせた時、視界に入った自分の手を見て私は絶句した。  手が真っ黒だった。 「な……に……?」  私は周りの様子を知ることなく、意識を手放した。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加