884人が本棚に入れています
本棚に追加
(解決策は、なにも見つかってない……)
他の準備が着々と進行しているのに対し、セシルとレオンの希望だけは暗礁に乗り上げたまま停止している。
何年かかるかわからないが、アレックスが魔力をコントロールできるようになれば、四六時中一緒にいる必要はなくなるはずだ。そうすればセシルがレオンと共に過ごす時間も作れるだろう。レオンの提案通り、夜だけでも彼と一緒に過ごす――はさすがに不埒な考えかもしれないが、二人で過ごす時間を多少は確保できるはずなのだ。
「ではお疲れ様会にしましょうか。今日は僕の奢りですよ」
迫りくる刻限に内心一人焦っていると、マルコムの明るい声が研究室内に響いた。ハッと我に返るセシルの隣で、ルカとジェフリーが喜びの声を上げる。
「わーい! ごちそうだー!」
「室長太っ腹~」
二人の喜ぶ姿を見ていると難しい考えがどこかへすっと溶けて消えていく。明るい同僚たちに、セシルはいつも密かに慰められているのだ。
マルコムと目が合うと彼がにこりと笑顔を見せる。ルカとジェフリーにはまだ伝えていないが、マルコムには研究所の退職と言える範囲での事情の説明が済んでいる。
セシルの不安を酌み取って微笑んでくれるマルコムに感謝して、今日はセシルもたくさん食べて飲もう――と決めた矢先だった。
廊下の向こうからパタパタと複数の足音がしたかと思うと、その足音が研究室の前で止まる。直後にピピッと音がすると、開いた扉の向こうからある人物が室内に転がり込んできた。
最初のコメントを投稿しよう!