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27. 混ぜるな危険 前編 ◆
「はあ……お腹いっぱい……!」
レオンの部屋に運ばれてきた食事は前菜からデザートまで美食の限りを尽くしたように彩り鮮やかで、どれも最高に美味しかった。おかげでここ最近では珍しいほど豪華な食事をとったセシルだったが、レオンは途中からずっと呆れ顔だった。
「どこがだ。全然食べてなかっただろ」
「食べましたよ。僕、元々たくさん食べる方じゃないので、途中で量を減らして頂けて助かりました」
確かに運ばれてくる料理はどれも美味しかったが、いかんせんセシルには量が多すぎた。レオンは細身の割に食が太いらしく出されたものは残さず口にしていたが、そのレオンの友人だと聞いていたためか小食のセシルにまで彼と同じ量の食事が提供された。
メインが運ばれてくる前に『全部は食べ切れないかもしれない』と申告するとすぐに量を調節してくれたので、本当に助かった。おかげで何とかデザートまで辿り着けたので、レオンにも食事を準備してくれた人にも感謝するしかない。
「実は一人前を食べ切れないことも多くて、いつもジェフリーに半分食べてもらってるんです」
「ジェフリー?」
「さっき心配してくれてた人です。同じ研究室に勤務してる仕事仲間で」
「ああ、あの不憫な奴か」
先ほど馬車に乗る際のやり取りを思い出したのか、レオンがつまらなさそうに鼻を鳴らす。
その様子を見たセシルは、ソファに背中を預けたまま苦笑いを零した。レオンは先ほどもジェフリーのことを不憫だと言っていたが、あの場ではああする他ない。
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