27. 混ぜるな危険 前編 ◆

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「結論から言うと、薬は今すぐには飲ませないという判断になった」 「そ、そうですか……」 「だがどんなに遅くてもマギカ・リフォーミング予定日の一か月前までには目覚めさせることが決まった。俺も薬さえ完成すれば目覚めの先延ばしも可能だと意見はしたが、時期については覆らなかったな」 「……」  淡々とした報告を聞くと、レオンのシャツを握る手にも力が入る。  もちろん、これまで『アレックスに魔力を注入する』という目的で実施されていたマギカ・リフォーミングの日が『目覚めの最終期限』になるだろうと予想はしていた。  もしセシルが薬の製作に失敗したり薬が上手く作用しなくても、例年通りにマギカ・リフォーミングを実施してマナさえ与えていれば、アレックスは今後も生きながらえることが可能だからだ。  期限を長めに設けているのは、万が一失敗して目覚めなかったときに再度薬を飲ませるか、マギカ・リフォーミングを実施するかの判断を下す期間が必要だからだろう。  これがアレックスの父である国王や母である王妃、政治に関わる有力貴族たちやアレックスの主治医の意見などを総合的に判断して導き出した答え。決定権を持つ人々の間で入念に話し合われて出された結論ならば受け入れるしかないし、セシルには口を出す権利すら与えられていない。  もちろんアレックスが目覚めたのち、彼と行動を共にすることを国王陛下直々に命じられたら、今後はセシル自身にも関わる話だ。そうなったときはセシルの状況や考えも多少は考慮してほしいと思う。
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