27. 混ぜるな危険 前編 ◆

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「レオン様……だめ、です」 「ん?」 「は、恥ずかしい……ので……」  そうだ、恥ずかしい。  レオンは自分たちの関係を恋人同士だと言うし、セシルもそう思ってくれることは嬉しい。  だがそれとレオンの部屋でこのまま抱き合うことは別の問題だ。気持ちが不安定な今の状態で激しく抱き乱されたら、いつも以上に我を忘れてレオンに縋ってしまいそうな気がする。  誰がこの部屋の前を通るかもわからない。恥ずかしいから今日は止めて欲しい。――と口にするより早く、レオンが短い呪文を唱えた。  するとすぐに部屋の照明が消える。扉にガチャンと鍵がかかる。広い部屋のすべてのカーテンがするすると引かれ、外界との情報が遮断される。 「ほら、防音魔法も使ったぞ。これでいいだろ?」  セシルが恥ずかしいと感じる要素を丁寧に握り潰され、まだ何かあるか? と微笑まれる。やはりレオンは優秀な王子様だ。完璧な魔法と根回しにぐうの音も出なくなる。  セシルにとって一番恥ずかしいのは目の前にいるレオンだ。彼に痴態を晒してあられもない声が出てしまうことが、本当は最も恥ずかしい。 「明日に備えてぐっすり眠れるよう、たくさん啼かせてやる」  しかし拒否の言葉は言わせないとばかりににこりと微笑まれて再度唇を奪われる。それだけでセシルの身体は脱力して何も言えなくなってしまうのだ。
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