30. 雛鳥の目覚め

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 彼を目覚めさせるための薬は、三つしか用意がない。そのうち一つは最初に起こす際に使用するので、予備は実質たったの二つ。アレックスが精通を迎えるまでは新しい薬の製作が困難なため、彼の男性機能が成熟する前に薬を使い切ってしまうと、今度は本当に目覚めさせることが出来なくなってしまう。  不測の事態を避けるため、アレックスを取り巻く人々は皆、目覚たあとの環境を懸命に調整中だ。  アレックスに与える予備の魔力の確保、彼の主治医を中心とした魔法医療チームの強化、アレックスの魔法の教師の選出、マギカ・リフォーミングの継続実施の検討――そしてセシルをアレックスのパートナーとして確立するための動き。  アレックスが目覚めれば、セシルは常に彼と行動を共にすることとなる。しかし王族どころか今は貴族ですらないセシルが、突然第一王子の傍に身を置くとなると、当然それを受け入れられない者も出てくるはずだ。そのためセシルをアレックスのパートナーとして公的に認めさせるための調整が進んでいる。  セシルも国王と王妃への挨拶を済ませ、自らの口で魔法書に書かれていたことを翻訳して説明し、彼らの提案を受け入れることに同意した。それと同時にセシル自身もこの『蓄積と隠匿の魔法』を強化する訓練に臨み、彼の目覚めに備える日々を送っている。  その一方で、レオンと共に『セシルがアレックスの傍にいなくてもいい方法』も模索している。暇を見つけては書物を読み漁り、レオンと議論を重ねることで、セシルがレオンの傍に身を置くための方法を必死に考えているのだが。
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