30. 雛鳥の目覚め

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「セシル様、皆様、お疲れ様です」 「ローランド様……!?」  その人物の姿を認めた瞬間、セシルは思わず大きな声を上げていた。  入り口に立っている女性事務職員の姿を見て、ローランドが無理矢理乗り込んで来たのではなく、正規の手続きを踏んで研究所の職員に連れられてここへやってきたことに気付く。  ルカとジェフリーが、誰? と不思議そうな顔をしているが、二人に事情を説明している状況じゃないこともわかる。 「申し訳ありません、セシル様。これから城に来て頂きたいんです」 「え?」  研究員たちへの労いの言葉を述べて以降ずっと息を切らしていたローランドが、ようやく呼吸を整えてセシルに向き直る。そのまま数足歩んでセシルの耳元に唇を寄せると、他の者には聞こえないほどの声量で驚きの事実を囁く。 「アレックス殿下が、目を覚ましてしまいました」 「え……ええっ!?」  思いもよらない報告に、せっかく密やかに報告してくれたローランドの配慮を台無しにするほどの大声量を発してしまうセシルだった。    * * * 「申し訳ございません、こちらの都合で」 「いえ、大丈夫です……」  王城の廊下を早足で歩きながら、ここに来るまでに何度も繰り返されたローランドの謝罪に苦笑を返す。  彼が謝る必要はない。どう考えても、彼も迷惑に巻き込まれた側の人間だ。 『王妃が……フローレンス妃殿下が、アレックス殿下に勝手に薬を飲ませて、目覚めさせてしまったんです』
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