30. 雛鳥の目覚め

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 アレックスが地下の部屋から魔力を蓄積しておく装置ごと自室に移されたと聞き、許可をもらったセシルもアレックスの部屋へ通された。広い部屋に入るとそこには十数人の人が集っており、入り口のほど近い場所にレオンが佇んでいた。  レオンが勝手な真似をしたフローレンスを責めているのではないかと冷や冷やしていたセシルだったが、彼は思ったよりも冷静だった。しかしセシルの顔を見るなりほっと安堵の表情を浮かべたので、やはり怒っているには怒っているようだ。 「悪かったな、セシル。仕事の後に呼び出して」 「いえ、それは全然……」 「ああ、セシル!」  近付いてきたレオンが労いの言葉をかけてくれるが、それに反応したのはやり取りを聞いていた王妃フローレンスだった。部屋の中央にある大きなベッドの傍にいた彼女が、セシルのいる入り口の方へ視線を向けてくる。  以前国王に謁見して挨拶をしたときに彼女にも会っているが、最初に会ったときはレオンとその傍に立つセシルが気に入らないと言わんばかりの態度だった。冷ややかな視線を向けられ、セシルは一人で震えあがっていた。  しかし今夜はまったく違う印象だ。冷たい態度が一変し、表情も明るく声も高く、喜びを全身で表現される。 「本当によくやったわ、大成功よ! おかげで私の可愛いアレックスが、長い眠りから目を覚ましたんですもの!」
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