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31. 拒絶反応
悔しさを滲ませながらも感情を押し殺すレオンと、愛息子の目覚めに気分が高揚している様子の正妃フローレンス。二人の間で視線を交互に彷徨わせながら、セシルは何と言えばいいのかと狼狽する。
そんな三人の中に割り入ってきたのは、セシル以上にこの状況に困惑している様子のアレックスだった。
「ははうえ……僕、こわい」
見た目の年齢はおおよそ十二歳ほど。だがそれは長年魔力を流し込み続けてきた結果、身体が幾分か成長しているにすぎない。
「いやだ……おまえたちは、きらいだ」
二十年間ずっと目覚めず眠り続けていたアレックス本人の認識としては、少し長く眠ってしまったという程度だろう。記憶も、知能も、思考も、喋り方も、五歳の少年のそれと変わらない。大勢の大人たちに囲まれた恐怖と不安に涙を浮かべて怯えるアレックスの姿は、『幼い王子』そのものだった。
「そうね、アレックス。急にたくさんの人がお部屋に来たら、怖いわよね……」
そんなアレックスの心の機微にもっとも早く反応したのは、彼の実母である正妃フローレンスだった。
フローレンスはセシルの手を離すとドレスの裾を持ち上げて再びベッドに近づき、彼女に向かって必死に手を伸ばすアレックスの細い体をひしっと抱きしめた。
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