6人が本棚に入れています
本棚に追加
春の足音が近づいた頃、妻の容態が急変した。
その日、朝食を済ませ、妻の病院へ行くため椅子から立ち上がった時だった。携帯が鳴った。
病院からの緊急の呼び出し。妻の意識レベルが下がったとのこと。すぐに娘たちに連絡を入れ、僕は病院へと向かった。
20分後に病院に到着し、病棟へと走った。
案内されたのはいつもの部屋ではなく、処置室。酸素マスクを付けられた妻がそこに横たわっていた。
「真央……」
僕は妻の手を握った。
妻からの反応はなかった。
1時間後、娘たちが処置室に到着し、僕たちは3人で主治医からの説明を受けた。
今夜が峠。
主治医ははっきりと言った。
娘に支えられながら談話室を出て、僕たちは特別室へと案内された。今日はここに1泊する。
娘たちは宿泊に必要な物を取りに帰るため、一旦家へと戻った。
僕は1人、処置室へと行き、妻のそばにいた。
妻は目を閉じたまま、静かに呼吸していた。
最初のコメントを投稿しよう!