そしてまた、ひとり

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 春の足音が近づいた頃、妻の容態が急変した。  その日、朝食を済ませ、妻の病院へ行くため椅子から立ち上がった時だった。携帯が鳴った。  病院からの緊急の呼び出し。妻の意識レベルが下がったとのこと。すぐに娘たちに連絡を入れ、僕は病院へと向かった。  20分後に病院に到着し、病棟へと走った。  案内されたのはいつもの部屋ではなく、処置室。酸素マスクを付けられた妻がそこに横たわっていた。 「真央……」  僕は妻の手を握った。  妻からの反応はなかった。  1時間後、娘たちが処置室に到着し、僕たちは3人で主治医からの説明を受けた。  今夜が峠。  主治医ははっきりと言った。  娘に支えられながら談話室を出て、僕たちは特別室へと案内された。今日はここに1泊する。  娘たちは宿泊に必要な物を取りに帰るため、一旦家へと戻った。  僕は1人、処置室へと行き、妻のそばにいた。  妻は目を閉じたまま、静かに呼吸していた。
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