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深夜1時、次女が悲壮な顔で入って来た。
「父さん!お母さんが……」
僕は飛び起きて、すぐに妻の元へ向かった。
処置室の扉を開けると、主治医の先生と看護師が1名、妻のそばに立っていた。
「真央!」
妻の呼吸は浅かった。しかも間隔が長く、今にも止まりそうな呼吸だった。
主治医と看護師はモニターを確認しながら、点滴のスピードを調整していた。
呼吸の間隔は徐々に長くなった。
もう次の呼吸は来ないんじゃないか?
そう思うと同時に、妻は浅くて弱い吸気と呼気を発した。
主治医と看護師は、モニターと妻を交互に観察していた。もうなす術がないのだ。手は動かしていなかった。
もしかして、真央はこのまま呼吸を続けるんじゃないか?そして、少しずつ呼気する力を取り戻して、また笑ってくれるんじゃないか?
そう思った矢先だった。
小さな羽毛がふわりと地に落ちるような、そんな時間だった。
真央は静かに、その呼吸を止めた。
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