6人が本棚に入れています
本棚に追加
そうか、君はここにいたのか
僕は本のページを閉じ、テーブルに置いた。数ページ読み進めたものの、その内容は全く頭に入らなかった。
窓の外に目を向ける。穏やかな日差しが、優しい光を部屋へと運んでいる。
とても静かな世界。
僕は1人。
ソファーから立ち上がり、ベランダに出た。雲はあるものの、その隙間から光が差し込んでいた。
妻がいなくなって2ヶ月。
何も変わらない町。
ふと目の前を舞うものがあった。
雪だ。
たしかに今日は寒い。しかし、こんな時期にこの地に雪が舞うなんて。
僕はしばらく見とれていた。
妻が生きていたら、すぐに声を掛けていただろうに。
雪は次第に強さを増したが、地面に落ちてはすぐに消えていった。
積もることはないだろう。
僕は踵を返し、部屋へ入ろうとした。
正面に見えるキッチン。
笑ってる妻の姿が見えた。
最初のコメントを投稿しよう!