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そうか。
君はそこにいたのか。
そこだけじゃない。
君の使っていた服やバックを、そのまま置いてある部屋にも。
化粧品を置いてある洗面所にも、いつも長く浸かっていた浴室にも。
よく履いていたスニーカーや、少しヒールの高い靴のある玄関にも。
僕が今しがた座っていたソファーにも。
この家の至るところに、君はいたんだ。
いなくなったと思い込んでいたのは、僕の心だった。
いるはずのところにいないと思うのではなく、僕の心さえ変われば、いつも君はそこにいるんだ。
僕は部屋に入り、ベランダの窓を閉め、再びソファーに座った。
「今ね、雪が降ってきたよ」
僕は妻に話しかけた。
声は聞こえないが、その存在を感じることはできた。
僕は目を閉じ、ソファーの背もたれにもたれた。
少しだけ、悲しみを乗り越えられそうな気がした。
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