ここに、ひとり

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 朝起きて、いつものリビングへ向かう。 「おはよう」  誰もいないリビングに、独り言を放つ。  妻はもういないのに。  習慣とは恐いものだ。  仏間へ行き、淹れたてのお茶と線香を上げる。白い桜の施された骨壺が、ぽつりとそこにある。  妻がいなくなったことを、改めて実感する。僕は手を合わせて、1つため息をつき、仏間を後にした。  簡単な朝食を済ませ、窓を開ける。  今日の天気は快晴。マンションの5階から見える景色は、昨日と変わらない。  僕はコーヒーを淹れ、読みかけの本を片手にソファーに座り、しおりの挟んであるページをめくった。  この前までキッチンに立っていた妻の気配を感じる。  だが、そこには誰もいない。  そんな当たり前が、なかなか受け入れられない。
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