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ふたり、歩む
僕たちは恋愛結婚ではない。親同士が決めた、いわゆる政略結婚で一緒になった。
僕の父親は教育長出の国会議員だった。妻の父は教師をしていて、僕の父が教育長時代からの知り合いだった。
彼女の父親は教育長をしていた僕の父にすり寄り、懇意を深めていった。いずれは自分も国政へ。妻曰く、そんな野心があったらしい。
僕たちはほとんど顔を合わすことなく、結婚させられた。披露宴には300名を超える有力者の方々が集まり、私たちのことは無視して、一生懸命に挨拶を交わしていた。
僕と妻は互いに顔を見合わすことなく、ただただ苦痛の時間を過ごした。
妻はその時、すでに諦めの境地に入っていたのか、何に対しても抗うことなく、僕たちは婚姻届けを提出した。
僕は大学病院に勤務する医者をしていたので、経済的には困ることなく生活できた。ただ、知らない者同士の生活。否が応にも余所余所しくなる。
可哀そうなことをした。
僕が妻に対して思ったのは、悲哀の感情だった。
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