鐘の音を待つ

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 左手を置いていた便箋にじわっと汗がにじむ。再びぎゅっと右手でシャーペンを握る。 『君に会いたい』  何度も書いては、消している言葉。きっと、君を困らせるんだ。君を苦しませてしまうんだ。  電話は優子の都合の合う時間がないため、できない。 今は平成が始まってちょうど二十年くらい経ち、携帯電話という便利なものが広まってきたが、機械音痴な優子は使いこなせないと言い、僕たちはずっと手紙でやりとりしていた。
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