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僕は、まだランドセルを背負っていたあの頃を鮮明に覚えている。
「歌手になりたいの。いつか大きなドームで歌を歌いたい」
微笑みながらそう優子は言ったが、耳が真っ赤で、緊張しながらも僕に告げてくれた将来の夢。
「アイドルの事務所にスカウトされちゃった」
セーラー服のリボンを揺らしながら、僕に駆け寄って教えてくれたこと。夢に一歩近づいた優子の顔は、幸せでいっぱいで、頬がピンク色に染まっていた。
サラサラの栗色の髪に、細い手足。その小さな顔に、まん丸な目、なめらかな曲線を描き、しゅっとした鼻梁、そしてハート型の唇が綺麗に並んでいる。
恋人フィルターがかかっているせいもあるが、優子はこの世界で誰よりも可愛い。
それが、世間にも知られただけだと思っていた。
そして、優子が夢を叶えたことと引き換えに、僕らの仲が引き裂かれるなんて、当時は思いもしなかった。
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