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鐘の音を待つ
『そうまへ。おおきくなったら、けっこんしようね。ゆうこ』
ぐちゃぐちゃのひらがなに、ハートがいっぱいの黄ばんだ便箋。
この手紙を貰ったのは、十五年も前だろうか。幼いながらも、結婚の約束をした僕らはまだ、この約束を果たしていない。
まだ高校生だから、というのが表面上の理由だけれど、優子が遥か遠い存在になってしまったから、というのも大きな理由だ。
幼い時から、僕らは恋人だった。
勉強机に置いていた、優子とコラボしている炭酸飲料を開け、一口飲む。口の中に甘い微炭酸が広がる。
ペットボトルのラベルの優子はウインクをして、微笑んでいる。
昔からあまり炭酸は飲まなかったけれど、優子がいるから、買ってみたのだ。
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