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他国の王族への不敬に加え、領地の管理も出来ていなかったとして、両親はソムニア王国へと強制送還されると同時に捕らえられ、私もまた王城へと連行された。
両親が国王陛下から裁きを受けている間、別室に呼ばれた私は、そこで我が伯爵家が取り潰しになること、両親は一生を牢で過ごすことになることを聞かされた。
ソムニア王国では、18歳が成人とされているので、まだ16歳で未成年の私は牢へと入れられることは免れることが出来たのだ。
だけど、当然ながら貴族籍は剥奪され、平民になる。
そして、家の財産は全て没収。
私がたくさん集めていたドレスやアクセサリーも例外ではなかった。
現実が受け入れられず、泣き叫ぶ私に、エターニア王国からの使者という方は無表情のまま一通の手紙を差し出して来た。
それは、姉からの手紙だった。
全てを失った私を嘲笑う言葉が綴られているとばかり思った手紙は、私の今後を憂う言葉で溢れていた。
愚かな私は、それを読んでひたすらに泣き続けることしか出来なかった。
こんなにも愛されていたことに、これまで気が付けなかったことが、情けなくて申し訳なくてたまらなかった。
この時になって、私はようやく気が付いたんだ。
私を本当に愛してくれていたのは誰かということに。
ソムニア王国から私へと示された今後の生き方は二つ。
一つは、神殿へと入り、神へ仕える道。
もう一つは、平民として一人で生きていく道。
ただし、どちらを選んだとしても、私は今後一切王都への立ち入りは禁止とされた。
そのことを告げた文官は、神殿へと入ることを薦めて来た。
それは当然だと思う。
神殿へ入れば、行動には様々な制約は付くけど衣食住は保障されているのだから。
多少は魔法の心得があるとは言っても、私のような世間知らずで愚かな小娘が、平民として一人で生きていけるとは思わなかったんだろう。
それはわかっていたけど、私は平民として一人で生きていくことを選んだ。
私を嫌っているとばかり思っていた姉が。
こんなに愚かな妹のことを案じてくれた優しいあの人が。
王太子妃として、どんな国を作っていくのか。
それを近くで見たいと思ったから。
本当は、もう一度会いたい。
会って、これまでのことを全て謝りたい。
もう一度姉妹としてやり直したい。
でも、私にはそんな資格がないのはわかっている。
きっと、姉がまだ家にいた時にその機会は何回だっであったはずなんだ。
それなのに、私がその全てを無駄にしてしまったから。
「それでも、せめて近くで生きていくことはお許しください、お姉様」
髪を売って得た旅費は、もうほとんど使い果たしてしまった。
それでも、私はここでこれからの人生を歩みたくてやって来たんだ。
夕陽が世界を赤く染め上げていく中、視界に入って来た大きな街。
エターニア王国王都、ターニリア。
私はこの街でもう一度人生をやり直そう。
もし、もしもいつか。
あの人に会えた時。
せめて、その顔を正面から見ることが出来るようになる為に。
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