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慣れない、いや、初めての徒歩での旅路に、靴擦れや幾つも出来てしまった豆がズキズキと痛む。
薬草を買って、泣け無しの知識で一応の治療は試みてはいるものの、良くなる気配は全くない。
それどころか、一歩歩くごとに悪化している気さえする。
こんなことなら、回復魔法も習得しておくべきだった。
そう思っても今さらどうにもならないし、そもそも私にその適正があるかもわからないけど。
しかし、どれだけ痛くても歩みを止める訳にはいかない。
朝、日の出と共に宿を出て、それからずっと歩き続けてはいるけど、次の街まではまだ道半ばなのだから。
空に目をやれば、太陽はちょうど真上まで登っている。
今のペースを維持さえ出来れば、何とか日暮れまでにはたどり着けるはずだ。
本当なら、きちんと休憩をして食事をとるべきなんだろうけど、今休んでしまったら立ち上がれる自信がない。
だから、歩きながら干し肉を齧り、水筒から直接水を飲む。
少し前までの私だったら、こんなにボロボロになるまで歩くことも、歩きながら食事をすることも全く考えられなかった。
移動はいつでも馬車だったし、今日みたいに天気の良い日ならば昼食は屋敷の庭で優雅に食べていただろうから。
草原を吹き抜ける風が、今は肩までの長さになってしまった髪を揺らす。
かつては腰に届く程伸ばしていた金髪は、私の自慢だった。
艶のある自慢の髪も、翡翠色の瞳も、両親だけでなく、出会う人全てが褒め称えてくれた。
そうやって周囲の人々からちやほやされるのが当たり前になっていた私は、奢り昂っていた。
だからこそ、全てを失うまで何も気付かなかったんだ。
両親が本当はどういう人間なのかということも、私が本当に信じるべきは誰だったのかと言うことも。
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