神隠し、あるいは

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 「一緒に帰るんだもんね」とあの子は言いました。それと同時に、穴は完全に消えて――何か恐ろしいものの気配は、どこにもなくなりました。  感じた恐怖や安堵から泣きじゃくる私の手を引いて、あの子は家に帰りました。  そんな私たちを迎えたあの子のお母様から、私はあの子と、あの子のお母様の血筋にまつわる話を聞くことになりました。  『神隠し』に遭いやすい家系……こうして言葉にすると、なんて幻想じみた、それでいて陳腐な響きでしょうか。  かろうじて家は続くものの、不可思議な現象によって人が消えてしまう家系。  ……あの子のお母様のことは?   そうですか。それくらいの調べはされていますよね。ええ、あの子のお母様も、同じだったといいます。  あの子と同じく、どこからか呼ばれ、招かれる――いえ、これは適切ではありませんね。引きずり込まれる業を背負った方でした。
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