神隠し、あるいは

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 ……あの子の話が聞きたいのですか。それとも私の話が?  面白い話ではありませんし――きっと、荒唐無稽な作り話だと思われるのではないかと思いますが……ああ、最初からそれがお望みなのですね。そうですか、『神隠し』ですか。そちらの関係の方なのですね。  いいでしょう、興味本位でも、結局は戯言と思われるのでも、きっとあの子のことを知る人が増えるのは、悪いことではないでしょうから。  さて、どこから話しましょうか。あの子の『神隠し』についての話を御所望なのでしたら、そうですね、私とあの子の幼い頃からの方がよいでしょうね。  あの子と私は、幼馴染でした。あの子の一家が引っ越してきたのは、確か私が三歳の頃だったと記憶しています。  さすがに詳しいことは覚えていませんが、初めて会ったあの子は、お母様の足にしがみついて、隠れるようにして私を見ていました。恥ずかしがり屋というのか、引っ込み思案というのか……とても内気な子だったのです。
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