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で、出た……
「エミリア~。だってぇ……見て見て、フィリアちゃんがいたんだよ!」
「おや、久しぶりだねフィリア。相も変わらず目を引くね君は」
ボーイッシュな銀色のショートヘアがよく似合う、エミリアと呼ばれた女の子は私に小さく手を振り落ち着いた雰囲気を漂わせている。私への距離感からして二人は以前からの友人か顔見知りあたりだろう。
正直一人で学院生活スタートじゃないのは助かった。
「ところで二人もこのクラスなのよね。ええと……席をどうしようかと迷っているのだけれど」
私は今ありえない速さで二人をチラ見している。外面はよくても中身が陰キャラの行動を取ってしまうのは悲しき性だ。
「だったらあそこにしよー! フィリアちゃんが真ん中で、あたしたちがその両端!」
すかさずシャロットが一番後ろの席を指差した。よし、今後はこの子の決断力に委ねていこう。
一番の難所だろう友達作りと席の場所決めをクリアした私は、ふひひという声が外に出ないよう口元をしっかり押さえながら他の席を見回している。何人かで組になっているところもあればぼっちのような子もいるみたいだ。
「私、お花を摘みに行ってくるわ」
いやお花って。自分の発言に吹き出しそうになりながら、教室をあとにした私は他のクラスの様子を見にいく。このAクラスのほかにはB、C、Dまでがあるみたいだ。魔法学院というくらいだから魔法の授業なんかもあるのだろうか。
トイレから出ると見覚えのある赤い髪の男が目の前を横切った。
「あ」
「あ」
まずい。やっぱり昨日森で会った言葉の通じないイケメンだ! 走りだそうとした時にはもう遅く彼は私の正面に立ち塞がっていた。
「やはりフィリアさんでしたか! いやあ奇遇ですね。その後お体の調子はいかがです?」
体の調子ってなんだろう? ああそうか、この人の中で私は病気になってるんだっけ。
「その節はありがとうございました。今は大したことありませんので、どうかお気になさらず」
「それならよかった。しかし昨日から感じてはいたのですが……僕を避けていませんか?」
「それは考えすぎではないでしょうか。さて、友人を待たせていますのでこれにて」
体よく教室に戻り席につくと、先生がすぐに入ってきて話を始めた。まさか彼も同じ学院の生徒だなんてびっくりしたな。まあでも、別クラスだろうしそこまで関わってはこないだろう。それよりもこの学院生活を楽しまなくては。
「ねえねえフィリアちゃん。あの人見てよー!」
隣からひそひそとシャロットが囁く。彼女はこういう静かにしないといけない時も落ち着きがないらしい。
「どうしたの?」
「ほら、あそこに一人で座ってる人ぉ!」
「シャロット、あんまり大きな声だと怒られてしまうわ」
そう言いながら指差している方を見ると、そこには私に向けて大きく手を振るライルさんがいた……。
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