え、私?

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え、私?

「つまり魔法には炎・水・風・地、それから光と闇といった属性があり――」  翌日の教室。今は講師のエルフィーネ先生が教壇に立ち、私達に向けて魔法の成り立ちを始めとした話をしてくれているところ。  しんと静まり返る中、両隣には眠たそうに目を擦るシャロットや瞬きもせずに聞き入っているエミリアの姿が見える。  かつての私と言えば突っ伏して寝たふりばかりしていた。それがどうだろう。どこを振り返っても、暗黒の記憶しかなかった学校生活を塗り潰していくように思えて気持ちがいい。 「それでは、これから順番に皆さんの持つ属性を見せてもらいます。呼ばれたら前へ出てきてくださいね」  そう言ってエルフィーネ先生が眼鏡を外すと、主に男子生徒からはざわめくような声が上がる。  それもそのはず、三十も半ばだと言うのに若々しく二十前半くらいにしか見えない美貌を誇っているからだ。  このままいけば間違いなく美魔女まっしぐらだろう。なんて思っていると周りの生徒達が続々と呼ばれていき、私はその様子をぼんやりと眺めていた。 「えっへへ! あたしは風だって~。びゅんびゅん!」  今日も元気の子といえばもちろんシャロットだ。彼女はくるくると回りながら私の隣に戻ってきた。全体的にすばしっこいイメージがあるし順当かな? 「ボクは水だったよ」  エミリアはそれとは対照的に落ち着いた様子で腰を下ろす。  冷静な雰囲気からしてこっちも想像と違わない結果になっているみたいだ。  そうなると私のイメージってなんだろう。真っ先に思い浮かぶのは闇だけど今は違うはずだよね。 「おや……フィリアに用事でも?」  唐突にエミリアの声が上がると私も同じ方に視線を向ける。そこにはライルさんが立っていて、爽やかな笑みを浮かべるものだから私の頬は引きつった。 「やあ。先生に呼んで来てくれと頼まれてね」 「そうですか。わざわざありがとうございます」 「ちなみに僕は炎だったよ。果たしてフィリアはどうなるのかな?」 「あの、いきなり呼び捨てはどうかと思いますよ……?」 「だったらそっちもライルと呼んでくれればいい話さ。それじゃあね!」 「あ、ちょっと!」  そのままライルさんは自分の席に戻っていってしまった。こういう自信に溢れたイケメンムーブは本当に苦手だな。  そう思いながらエルフィーネ先生のところへ向かう。 「はい、じゃあ目を瞑って体の力は抜いてね」  言われるがままにしていると、体中をなにかが駆け巡るような感覚に包まれ始めた。探られているようでどこかぞわぞとして少しだけ気味が悪い。 「あら、こんなことがあるなんて……!」  先生の驚くような声に目を開けてしまいそうになるけれど、ぐっと堪える。そうしているうちにぽんぽんと肩を叩かれた。 「フィリアさん、お疲れ様。もう終わりよ」 「戻ってもいいですか?」 「ええ。あなたのこの力……どうか大事にしてちょうだいね」  どこか神妙な面持ちに思えるけれど、一人一人に同じようなことを言う方針なのだろう。ひたすらに愛想笑いを浮かべ席に戻るとシャロットとエミリアから声を掛けられた。 「フィリアちゃんどうだった?」 「ボクも気になるね」 「えっとね」  それは私が答えようとしていた時だった。 「はい、皆さんよく聞いてね。この中で唯一光属性となった子がいます。これは学院始まって以来の出来事であり、先生も大変驚いています」  え、光って……え?  戸惑っていると先生がにっこりと私を見ていた。
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