私は屈しないぞ!

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私は屈しないぞ!

 おぉ、とざわめきが教室中に響き渡る。瞳をキラキラと輝かせ、中でもひときわ大きな声を上げたのは言うまでもなくシャロットだ。 「すっごーい! せんせー、それ誰なんですかぁ~?」  エルフィーネ先生の視線は相変わらず私に向いていて、その口元は「いい?」って言ってるみたいだ。なにがいいのかわからないまま私は頷いてしまう。  すると先生はウインクしたあと口に手を当て二、三度咳払いをした。 「シャロットさんの一番近くに座っている子よ」 「えっ。それって……フィリアちゃんってことだよね!」  シャロットの大声と同時に教室中の注目が私に集まっているのがすぐにわかった。エミリアはもちろんライルさんまでこっちを見ていて、にこりと笑いながら手を振っている。  なにこれ? こんなこと初めてでまったく落ち着かない。  どういう反応をしていいのか迷っていると、先生は賑わう周囲を制するように声を上げた。 「はい、落ち着いてくださいね。属性がわかったところで、魔法の覚醒についてお話をしていきますので――」  授業が終わった途端、私の周りには大勢のクラスメイトが押し寄せることになった。  今すぐ逃げ出したいけど、両隣にはシャロットとエミリアがいてそれは無理そうだ。  熱に浮かされ私は当たり障りのない会話に終始していたような気がする。そうしてついにこの日の下校時間を迎えた。 「さあ、行こうフィリア!」  それは帰りの馬車を待っていた時。目の前にはライルさんが待ち構えていて唐突に私の手を取った。  見た目と違って力強いし、しなやかで細い指をしてるなあ。  ってそうじゃなくて、なんだかおかしい。こんなイベントはゲームでしか知らないのだけど? 私は不覚にもドキドキとし始め、 「くっ……イケメンなんかに屈しなぁい!」  雑念を掻き消すべく頭を振ると、ライルさんは顎に手を当て尋ねてきた。 「ん、イケメン? それはもしや薬の手掛かりなのでは?」 「いえ。今のはなんでもありません! そんなことよりどこへ行くつもりなんですか?」 「もちろん君を救うための情報収集さ。どうせ死ぬからなんて言葉は二度と言わせないつもりだよ。さあ、手遅れになる前に出立(しゅったつ)しよう!」  彼は爽やかな笑みとは裏腹に力強く私の手を引っ張った。本当に自分本位で強引な人。でも……なんだろう。今私はすごくわくわくしている。 「ライル、あらためてよろしくね。こ、こうでいいのかしら」 「その方が可愛いらしくて僕は好きだよ」 「陽キャめ……またそんな調子のいいこと言って……」 「ん、ヨウキャとは?」  ともあれ私達は一番大きな街だというフォスティーアに到着した。  初めてのファンタジー世界の街並みに、目に映るものがすべてキラキラしているように思えて視線が定まらないでいた。
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