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ひんやりとした湿った土が、左の頬にじゃりんとくっつく。
同じ目の高さで同じかっこをしているアカネちゃんの大きな瞳が、突然視界に乱入した男の子の瞳を見つめ返す。
「シュンたん?どうしたの?」
アカネちゃんは、それでもおんなじかっこをしたまま動かない。
右の頬を湿った土にくっつけて、その長くてさらさらの髪も綺麗な人形のようなお洋服も、その上にかぶっているお揃いの幼稚園の真っ白なエプロンも…みんな土で汚したまんま。
アカネちゃんは、その大きな真っ黒いビー玉みたいな瞳を開けたまんま、ずうっっと寝そべっているのだった。
「アカネちゃんのマネ」
シュンちゃんは、アカネちゃんの瞳を覗いたまま、何て答えていいのかちょっとわからなくなって、結局そう答えた。
「ふぅぅん」
アカネちゃんは、聞いたくせにどうでもいいような返事を返して、ゆっくり目を閉じた。
「アカネちゃん、何してんの?」
しゅんちゃんは、気持ちよさそうに目を閉じて寝そべっているアカネちゃんに問いかける。
土の上で寝そべっているなんて、どうしたんだろうと思いながら。
アカネちゃんは、目を閉じたまんま。
「つめたくって、とってもいいの」
と、とろけるようにお話する。
そのまんまずうっと寝てたら、絵本みたいにバターになって溶けてしまうんじゃないかって、シュンちゃんはちょっと心配になった。
でも…目の前のアカネちゃんは、とっても気持ち良さそうに寝そべったまま動かない。
シュンちゃんは怖かったけれど真似をして目を閉じてみたら、アカネちゃんのいうとおり、ひんやりとした土の感触が気持ち良くって、ほんとだぁって思った。
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