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3年生になると皆んなはちょっとづつ、ちょっとづつ変わっていく。
でもアカネちゃんは変わらずに、いつものように運動会での100m走で楽しそうにスキップしながら最下位を独走的に走っていた。
クラス対抗の合唱会でも、アカネちゃんは一番上手に大きな透き通る綺麗な声で歌っていたけれど、踊りながら歌うので先生に、何度も何度も注意されて列に戻されていた。
あんなに楽しそうなのに、なんでだめなのかなと、シュンちゃんはいつも思ったけれど先生にいえなくて。
「男らしくないな」と、シュンちゃんはいつも内心しょげているのだ。
そんな日の帰り道には、アカネちゃんが道端で必ずしゃがみ込んでいる。
声をかけると、
「シュンたん!これあげる!」
といって黒い大きな目をもっと大きく開いて、シュンちゃんの開いた手に見つけた宝物をしずしずとのせてくれた。
今日は、取れたボタンだった。
猫の愛らしい姿を透明なカプセルに閉じ込めたような模様の不思議なボタン。
ちょっと紺色の糸の切れはしが、おまけに付いている。
「綺麗だね!もらってもいいの?」
「うん!シュンたんだからいいの!」
そういって、アカネちゃんはお礼をいう間もなく、スキップしてまたどこかに行ってしまった。
シュンちゃんとアカネちゃんのお気に入りの遊びは、昔から宝物探しだった。
シュンちゃんは海賊柄の、アカネちゃんはアヒル柄のクッキー缶に拾い集めた宝物を収めていた。
誰にもいっていない、ふたりの秘密。
アカネちゃんからもらった特別な絵柄のボタンは、シュンちゃんに元気をくれた。
アカネちゃんに今度は僕からおかえししなきゃね。
とびきり素敵な宝物を!
まねてスキップしながら帰ったシュンちゃんだったが、もうその機会は訪れなかった。
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