あなたと会えた日。

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
突然、あなたは消えてしまった。 ずっと私を苦しめてきた人。 私は、あなたの目が嫌いだった。 悲しそうな、苦しそうな、あなたの視線は、いつも私を不安にさせた。 だから、いつしか、私はあなたの目を見なくなった。 どんな顔だったのか、はっきり思い出せない。 急に消えるなんて、どういうつもり? 私は、あなたにそっくりなアンドロイドの上半身を作り、台の上に乗せた。 1人で逃げるなんて許さない。 さぁ、私の悲しみを、怒りを、受け止めなさい。 怒鳴ってやろうか、いじめてやろうか、と考えながら、私は、あなたにそっくりなアンドロイドの目の前に立つ。 あなたと瓜二つのアンドロイドは、不安げに私を見つめている。 私は消えない憎しみを込めて、睨みつける。 「怖いよ。怖いよ」 アンドロイドは、震え泣き出した。 でも上半身しか作ってないから、アンドロイドは逃げる事も出来ない。 まるで、どこにも逃げる事ができなかった私みたいに。 泣いているアンドロイドは、まるで子供だ。 思い起こせば、あなたは子供のような人だった。 子供のまま、歳をとってしまった人。 あなたも苦しんでいたのかもしれない。 私は、声をあげて泣いた。 アンドロイドは、私を抱きしめると優しく頭を撫でた。 泣きながらアンドロイドの顔を見ると、とても優しい目で私を見つめていた。 私を産んでくれて、育ててくれて、ありがとう。 全て許すから、全て許して。 アンドロイドは消え、美しい百合の花に変わった。 私は、その百合の花を、たくさんの花に囲まれたあなたの胸にそえた。 もう開く事のない、まぶた。 とても安らかな死に顔。 今までで、一番大好きだよ。 あなたは、もう苦しまなくていい。 どうか安らかに眠って。 さようなら...。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!