帰郷

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帰郷

 都会の大学に進学して以来数年ぶりに訪れた駅舎は、新しく立て替えられていた。  近代建築など都会では珍しくもなかったが、昭和の面影を残すうらびれた町なみにそびえるプレハブの異質さが目を引く。  駐輪場は撤去されたのか。   高校時代はバイク通学していたが、好意を寄せていた()に会うため訪れていた日々を思い出す。見慣れた風景が、今もかわらず視界に広がっていた。  懐かしい空気を胸いっぱいに吸い込みあたりを見回すと、遠くにもまた田舎らしい風景に違和感を放つ、記憶にない巨大な建物が眼に入った。プレハブ工法で建てられた工場らしかった。 「変ったな」  (さび)れた田舎を捨てる若者は少なくない。戻りたいとは思わないだろう。しかし今、この()まわしき思い出の地に立っている。
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