帰郷

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 迎えが来るまで、活気のない駅前通りを国道へと向かう。こんな人()のない町でも、人と眼が合えば居心地悪くなる。やがて町役場が見えてきた。戦前に建てられた鉄筋コンクリート造だった筈だが、役場もまた、洒落(しゃれ)たといえば聞こえはいいが、成金じみた建物に立替られていた。  寄ったついでに、住民票を移しておく。 「ユーターン組ですか?」  若い職員が、窓口から笑顔を覗かせた。 「しばらく実家に厄介になります。あとの事はこれから。町も随分発展してるようだし」  若い職員は、得意げに街が誘致したプラントの話を語って聞かせた。世界的に名の通った大企業の生産と物流施設らしかった。 「駅から見えたでしょう? フルオートメーションで職員は殆ど居ませんけど、求人募集してますよ」  そう云うと職員は、ニタニタと愛想笑いを浮かべた。
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