RE

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 昨夜の粉雪はいつの間にか本降りに変わったらしい。閑散とした待合室の、巨大な掃き出し窓に面した中庭が丸ごと新鮮な雪で覆われていて、私はその壮大な白に思わず見入った。  なおも膨張し続ける白を眺めながら、ぼんやりと思考を巡らす。とりあえず会計を済ませて、帰りのタクシーを呼ばなくては。こんな日は、なかなかつかまらないかも知れない。早く、呼ばなくては。思うのに、行動が伴わない。  焦点を少しずらすと、純白の庭に半透明の女が重なる。ほとんど部屋着のような格好をした、すっぴんの、幼児のような老女のような私だった。わかっていた。そもそも無茶な決断だった。こんな自分が、一人きりで産もうだなんて。本当は、どこにも帰りたくなんかなかった。タクシーなど一生つかまらなければいいと思った。
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