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旦那の顔を覗き込むと、目を閉じて深く息をしているのが分かった。
しっかり寝ている。
結構効き目あるんだ。
不眠で旦那が相談に言った医師から処方されたという睡眠薬。
それを砕いて先程の麻婆豆腐にたっぷり混ぜた。
インターネットによれば苦みが強いものもあるというから、味の濃いものにして塩も少し足してみたのだ。
味付けを変えたか、と聞かれたときには気が気じゃなかった。
万が一効かなかった時には諦めようと思っていたけど、どうやら効いたらしい。このチャンスを逃す手は……無いよね?
私は炊事用手袋をしたままの手で、旦那の頭をそっと持ち上げた。
起きる気配はない。
そのままゆっくりと押して、湯船に旦那を沈めていく。
万が一起きたときには、助けようとしたと言えばいい。
起きなかった時は、取り乱してあちこち電話して号泣しようかな。
旦那からの愛情は嬉しかったけど、退屈なことに変わりはないわけで。
それに、やっぱりお金は欲しいんだよね。
ぶくぶくと立ち上る泡を見ながら、私はお金の使い道を考えた。
やっぱり世界一周の船旅かな。
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