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右端のフォークを手に取り、直でサラダに刺す。和えてあるドレッシングはモエカの手製だ。いつもながらに旨い。
次々に口に入れる。ただ、ミモザ風と呼ばれる粒状の卵黄と角切りの燻しベーコンは、いつもより固い気がした。
ふと、モエカの天真爛漫な笑顔を思い出す。
モエカは家庭的な女だ。あのまま地元に残っていたら、きっとモエカと結婚したに違いない。それはそれで幸せに暮らせただろう。
ルナは食には余り興味の無い女で、サプリで生きている感がある。しかし、あのモデル並みのスタイルはその食生活で形成されているのだから仕方の無いことだ。結婚したら、確実にこんな手作りの食事とは無縁になる。
考えていると何故か寂しさが胸をよぎり、俺はハッとして頭を振った。
馬鹿馬鹿しい、ルナとモエカなんて比べるまでもない。結婚前で感傷的になっているのか?
気を取り直して、料理に向かう。
次はハンバーグだ。焼いた粗挽きの肉とソースの香りが食欲を唆る。
俺はナイフなど使わずに、フォークを横に立てて力を入れた。ハンバーグは柔らかく、肉汁が溢れたそれを、一口分に切り取る。大口で噛り付くと、口の中も肉汁でいっぱいになった。
うん、旨い。
少し油がくどいが、肉自体にハーブを効かせた濃いめの味付けで直ぐに気にならなくなった。
次いで、二口めを口にする。しかし、何度か咀嚼した後、何かが歯に引っ掛かった。
膜みたいな嫌な舌触り。摘んでツツっと口から出すと、それは半透明のビニールの様に見えた。
「何だ、コレ? 」
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