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会いたい人、というのはこの年齢になると少なくなってきますですね。
齢五十。チビ・ハゲ・デブ・ニート・童貞・子ども部屋おじさんと「家系ラーメン負の全部のせ」とよばれるこの私ですから、過去に出会った人なら再会を拒否されるのが現実というもの……。
となると、会いたい人は消去法で「まだ出会ったことのない人」となるわけでございますね。
もう女性に夢を見る段階は、とうに過ぎ去ってしまっておりますですよ。
お見合い、出会い系パーティおよびアプリ、街コン等「またも負けたか八連隊」以上の全敗記録を樹立している私にとって、嫁・彼女という概念はパソコンのウインドウズのごみ箱に棄て、完全消去しました。
では、どういう人に会いたいか?
一言でいって、「私を全肯定して、あがめてくれる人」であれば誰でもウエルカムでございますね!
私はこんなクリーチャー顔負けの風体で、能力も三歳児並みといわれておりますからして、どこか私の「いいところ」をほじくりだして、大フューチャーできる人なんか理想でございますです、はい。
いっておきますが私、性格の悪さや器の小ささは暴君ネロの千倍はくだりません。
だからこそ、他人に尊敬されたい!
賛辞を送られて、勲章とか賞状みたいなものプリーズ!
はい、もう誰に会いたいかよりも、宇宙のビッグバン並みに肥大した私の自尊心をダダ漏れさせているだけになってしまっておりますね。
もうネット掲示板の書き込みや、下に住んでる年老いた両親に威張り散らすだけでは、満足できないんですよいい加減。
かといってちょっとでも彼らに反撃されるとぐうの音も出ない、「金魚すくいですぐ溶けちゃう紙」並みのメンタルの弱さですから。
やっぱり理想というからには、二十代の女性、美人の処女!に褒められたいですね。はい、もう恥など、とうの昔にかなぐり棄てておりますですよ。
「ありのままのあなたって、素敵です」
うわあぁーっ!
どうですか、このキラーワードは?
生まれてこの方、努力や我慢という言葉を知らない私を「ありのまま」受け入れてくれる慈母のような精神っ!
こういうのでいいんですよ、こういうので。
「そのままの君が、チャーミングだよ☆」
で、出たぁーっ!
酒・タバコ・お菓子摂取し放題で一〇四キロまで育った、この不摂生わがままボディをチャーミングって!
「自分に正直なのって、カッコいいね!」
これぞ、錦の御旗っ!
自尊心の高さゆえ、なんにも動くことができない私を「自分に正直」という愚直な男らしいワードで褒め称えてくれれば、私もう「温泉につかった猿状態」にまで昇天してしまいますですねー。
会いたいっ!
こんな女の子、いやこの際性別や年齢などどうでもよくなってきましたですよ。
私をつかの間でも、現実から桃源郷へいざなってくれる人に会いたい!
「ありのまま」「そのまま」「正直」あたりしか自分で自分のいいところを掘削するのは限界のようですから、さらに多面的に、私のいいところを発掘して大褒めしてほしいところです……。
ダメなところなら、いくらでもあげられるんでございますけどもね。
「この腐ったブタ!」
「職歴なしオバケ」
「ローマ童帝アウグストゥス」
あー、これはみんな前に行ったSMクラブで女王様に罵られた言葉でございますね……。
もう、これから夜の海を見に行きたい気分になってきましたですよ。
……車の免許もってませんでした。
まだ見ぬ誰かさん、私をここから連れ出してくださいぃーっ!
終
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