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私が苦笑すると、そやろか、と香織は首を傾げる。そしてすぐに話題を戻した。
「さっきの話やけど、ほんなら、なんでため息ついてたん?」
「実は、前に話した展覧会のことを考えてて……」
「あー……あの、オッさんみたいな人の」
そう言う香織に、私はごほっとむせた。
「オッサンみたいな人って……、なかなか、ひどいよ」
円生がいくつくらいなのか分からないけれど、おそらくまだ三十代前半だ。若くはないが、『オッサン』というほどではない。
「ちゃうちゃう、『オッサン』やなくて、『オッさん』や」
香織は、『オッ』を強調させて言う。
「それ、何か違うの?」
「『オッサン』は、オジサンのことやけど、『オッさん』は、お坊さんのことやし」
えっ、と私は前のめりになる。
「京都の人はお坊さんのこと、『オッさん』って言うの?」
さあ? と香織は首を傾げる。
「京都の人か一部の人かは知らへんけど、『オッさん』とか『オッさま』て言うてる。ほんで、その『オッさん』みたいな人って、たしか円生さんて言うたっけ。ホームズさんのライバルやったんよね?」
私が大きな衝撃を受けているというのに、香織にとってはなんでもないことのようで、さらりと流して話を続ける。
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