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清貴は、ごくりと喉を鳴らした後、小さく笑った。
突然笑い出した清貴に、葵は一体どうしたのだろう? と困惑の表情を浮かべる。
「失礼しました。おそらく、あなたのご両親は隠しているつもりかもしれませんが、真城家の負債についてはすべて調べはついているんです。もちろん、金額が大きいことも」
えっ、と葵は訊き返す。
「祖父は、なんとしても元華族と縁を結びたかった。真城の名は、その借金を肩代わりしても惜しくないと考えていたんですよ」
にこりと微笑んで言う清貴に、葵は、そっと目を細める。
「清貴さんは、有能な方だと伺っております。あなたはそれで良いのですか?」
「僕は、別に。祖父には恩がありますし」
自分は、おそらく誰かを愛したりはできない男だろうから、祖父が喜ぶ相手と結婚出来ればそれで良いと思っていたのだ。
でも、と清貴は葵を見る。
自分を見つめる眼差しに、眩しさを感じ、清貴は目を細める。
――今、はじめて、僕は他の誰かを知りたいと思った。
どうしてこんなに強くいられるのだろうか?
もしかしたら、彼女には他に想う男性がいるのかもしれない。
そう思うと、手放すのが惜しくなり、清貴はしっかりと彼女を見つめ返す。
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