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くりすは、やっぱり、と満足気に相槌をうった。
「そうなのよ。葵は決意を胸に寝室まで来るの。コトに及ぼうとする清貴」
清貴は、それで、と前のめりになる。
「だけど、怯えている葵を前にできないのよ。葵は自分は専属の遊女としても価値がないと思ってしまう。そんな葵に近付く、幼馴染の男!」
清貴は、第二の男! 額に手を当てた。
「その展開、ほんまにあかんやつです。ますます続きが気になります!」
勢いよく顔を上げて言う清貴に、くりすは、そうなるわよね、と苦笑する。
「こんな展開をやっていたら、ミステリーどころじゃなくなるでしょう? 私はミステリーを書きたいの。だからボツにしたのよ」
「いえ、僕としては、こっちの方がずっと良いと思います。もうミステリーは後回しにして、こっちを書いていただけませんか?」
「な、なんてことを言うのよ!」
目を剥いたくりすに、すみません、と清貴は手をかざす。
「出過ぎたことを失礼いたしました」
本当よ、とくりすは鼻息を荒くして、腕を組む。
「出過ぎたついでと言ってはなんですが、こうしたらどうでしょぅ?」
「ついでって……なによ?」
「その忌々しい第二の男、葵さんの幼馴染が何者かによって殺害されてしまうんです」
はい? とくりすの声が裏返る。
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