水面下

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しかし、その日は結愛からの返事はなかった。 翌日の朝、彼女から連絡がきたものの仕事以外では会えないという内容だった。 今まで他愛のない話ができていたのが嘘のように、彼女のメッセージは業務的に変わってしまった。 さらにその日のうちに、貴船店長を通して結愛が定期生け込みの辞退の申し入れがあった。 一瞬心が繋がった感覚になったのは俺の気のせいだったのだろうか。 さすがの俺も諦めようという気になってきた。 一線を越えてしまったのは、この俺だ。 現実を受け入れるしかない。 結愛の態度は、これ以上そばにいたくないという表れだろう。 胸が苦しくして仕方なかった。 結愛が傍にいるのに、もう愛せないというのは拷問でしかない。 それから再び、苦しい日々が続いた。 忘れようと思っても、簡単に彼女が頭から消えることはない。 最後に一度でも話せたら気持ちが吹っ切れるのではないかと考え……俺は跳ね返されるのも承知で、貴船フラワーに向かった。 ――結愛が出勤していなかったらそれまでだ。この思いを諦めよう。 貴船フラワーの看板が建物の間に見え、自然と足が止まる。 これで結愛に会いに行くのは、本当に最後だ。 緊張と虚しさと、寂しさとで胸が締めつけられた。 立ち止まりしばし葛藤した後、俺は角を曲がった。 すると数十メートル先に見えてきた貴船フラワーの前に車が停まっており、スーツを着た男が、中へと乗り込むのが見えた。 「……なんでここに宮森が?」
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