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雪平は動きを止め、静かにグラスをテーブルに置く。
先程とは打って変わり、彼女は引きつった笑みを浮かべている。
「でも、うちの父も秋人さんのお父様も、みんなその気でいらっしゃるわ。秋人さんだけの問題じゃないんですのよ」
「薫が社長だったら、その通りにいっていただろう。だが君を選んだあいつはもういないんだ。俺は別の女性を愛している」
「……っ!」
途端に雪平は目を釣りあがらせ、テーブルに置いていた手を強く握った。
「瀬名結愛を牽制したようだが、いったい何を言ったんだ?」
結愛から直接話を聞くことができない今。
まずは彼女と雪平の間に何があったのかを、この場で明らかにしておきたい。
「そんな大した話はしていませんわ。うちと葛城堂の仲をお伝えしただけで」
「それだけじゃないだろう? 旅行に行ったとかどうとか……ドバイで食事をしたのは、君とふたりきりではなかった記憶だ。それに俺は商談が立て込んでいてほとんどその場に滞在できていなかった。結愛に誤解を与えるような言い方をしないでもらいたい」
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