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雪平の言葉に、心臓が大きく鳴る。
雪平は俺の動揺を悟ったのか、余裕のある笑みで淡々と事実を告げた。
「三年前――薫さんが亡くなってからすぐ、あなたのお父様がうちの家に謝りにきたのよ。そのときに、私聞いちゃったの。あなたに結婚前提でお付き合いされている親密な女性がいるって。その女と別れさせるためにうちでどうにかすると、それはそれは必死だったわ」
雪平の言葉に視界が歪み、眩暈が起きる。
心臓があり得ない速さで動き、鼓膜が鼓動の音で揺れている。
「まぁ結局、別れさせたところで、あなたが頑固でどうにもならないってなっちゃったけどね。うちの祖父ももう葛城堂を見限っているわ」
なんだって? 別れさせる? 結愛と、俺を?
信じられない言葉の数々に、思考が停止する。
最も望んでいない予想が当たってしまった。
俺ただひとりが何も知らず、父の手の内で踊らされていたということなのか。
言葉を失う俺の前で、雪平は鼻で笑う。
「あなたと瀬名結愛が再会したときに、私ピンときたのよ。あのときの女なんじゃないかってね」
全てを吐き出した雪平はすっきりしたように笑い、ナプキンで口を拭いてその場に立ち上がった。
「あなたも可哀想に……また会えたのに、瀬名結愛には他の男性との間に子供がいるなんてね。もうそろそろ現実を見て、目を覚ましたら如何かしら?」
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