1478人が本棚に入れています
本棚に追加
雪平が部屋を出ていく物音が、遠くで聞こえる。
結愛、申し訳ない。
冷静になり、彼女を俺の家の揉め事に巻き込んでしまったことへの、罪悪感が込み上げてきた。
正面に見えるオフィーリアの絵画が、空虚な俺の前に横たわっている。
行き場を無くし川に漂う彼女が、結愛の姿と重なった。
色白の手に握られた花々が、深い悲しみや、確かに手にしていた幸福を思い出すようにと、俺に訴えかけているようだ。
三年前――俺が家を空けている間に、結愛の身に何が起きたのだろう。
父はどうやって結愛に伝えたのだろう。
結愛は何故、何も言わず俺の前からいなくなったのだ。
どうして未だに、彼女はひとりで抱え込んでいるのだろうか。
すべて、すべて明らかにしよう。
そして、もう一度結愛と話をする。
まだ結愛が俺のことを想ってくれているのならば、人生をかけて幸せにするだけだ。
目の前に灯っていた蠟燭に息を吹きかけ、俺はその場に立ち上がった――……。
最初のコメントを投稿しよう!