私たちの花

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けやき坂を急ぎ足で突っ切り、駅まで急ぐ。 視界に仲睦まじいカップルや、笑顔のカップルが次々と通り過ぎて行った。 こういった光景を見ても、育児と仕事に必死でもう何も感じなくなっていたのに。 今年は違った。胸の奥がちくちくと針を刺すように痛む。 秋人と会わなくなってもうすぐ一ヶ月が経つ。 葛城堂の生け込みも、あやめの送迎を理由にして辞退させてもらった。 私の代わりに、今は山根さんが手入れに行ってくれている状況だ。 秋人から他愛のない連絡が度々来たけれど、私は素っ気なく返事をした。 当たり前のようにしばらくして連絡は来なくなり、胸が痛んで仕方なかった。 一度、私が休暇を貰っているときにお店にも来てくれたことがあったようだけれど、それきり。 葛城堂の秘書の方が来たと山根さんに教えてもらったけれど、きっと宮森さんが私に気付いて尋ねてきたのだろう。 そこでようやく、私は秋人への気持ちにけじめをつけた。 なんだかんだで私はだめだと思いながらも、好きの感情を優先し秋人の接触を本気で拒んでこなかった。 それは弱さからだ。 まだ秋人が何も知らないうちに、私は今まで通りの生活に戻ることが、互いにとって一番幸せだと思い出したのだ。 秋人の築き上げた生活を壊したくないし、ふたりの感情で今はどうにかなる問題ではない。 私は、これからもあやめとふたりで生きていく。お父さんとお母さんには迷惑かけちゃうけど。 あやめは絶対に幸せにする……。
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