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「そう?」
駅に到着し、歩みを遅くしながらイルミネーションを眺める。
あやめは喋りつかれたのか、イルミネーションを確認してすぐ、目を閉じてしまった。
「少しベンチに行ってもいい?」
「ああ」
秋人に断りを入れ、ベビーカーをベンチの横にロックして、体を屈めた。
あやめの体にかけていたブランケットの乱れを直し、ニットの帽子を深くする。
体が熱を帯びてきたのか、あやめは頬を赤くし、寝息を立て始めた。
「可愛い。結愛にそっくりだ」
秋人は私に続いてベビーカーの中を覗き込む。
「そうかな……? 嬉しい」
秋人にそっくりなあやめに私の面影があるなんて、ちょっと不思議な気分。
「そういえば、あやめちゃんの誕生日、九月なんだってな。さっき君のお母さんから聞いたよ」
「え……?」
突然あやめの誕生日の話題が出てきて、心臓の不穏な音が体に響く。
すると秋人はふっと目元を緩め、私を振り返った。
「結愛はあやめちゃんの父親のことを、これまでふたりに一切言ったことがないと聞いたよ。よっぽどの理由があるのか?」
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