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14-23
16時半。
ステージの片付け作業が始まった。悠人たちが佐久弥と語り合っている。大和も参加したことで、さらに賑やかになった。俺は黒崎と一緒に、遠藤さんを待っているところだ。正式に話を聞くためだ。今のうちに休んでおこうと、カステラを食べた後はソファーで寝転がった。
コンコン!
「なつきー。遠藤さんが来てくれたよー」
「はーい」
「もう平気か?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
遠藤さんと長谷部さんが入ってきた。もう一人のスーツ姿の男性は、高宮さんというプロデューサーだと紹介された。ディアドロップのアルバム収録を担当しているそうだ。ソファーに向かい合って座った後、またドアがノックされた。
「遅くなりました。黒崎夏樹の母ですが……」
「お母さん?」
入ってきたのは母だった。こっちを見るなり、ホッとした顔をしていた。遠藤さん達が立ち上がり、名刺を渡して挨拶をはじめた。まだ10代だから、同席してもらいたかったそうだ。お義父さんは賛成だ。実の両親の了解もほしいという話で、母が同席するということだ。
「では、始めさせていただきます。IKUエンタテイメントへの所属をお願いしたい。……夏樹君、どうかな?」
「よろしくお願いします」
「……お母さんは如何ですか?」
「本人に任せます。よろしくお願いします」
母が俯いた後で笑顔を浮かべた。頬が赤くなっていたのは、どうしてだろう?さらに、『これで役目は終わりです』と言うと、一目散に早瀬さんの元へ行った。さらに佐久弥とも話し始めた。一気に華やかな声に変化したから、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。会いたかったそうだ。
「お母さーん」
「いいじゃないか。圭一君、黒崎社長へ話しておくよ」
「お願いします」
「所属に関しては反対ではないのか?」
「いえ、父は賛成です」
「よかった」
よかったと思ったのは俺も同じだ。所属したからといって、忙しいミュージシャンになれるわけではない。歌うことは続けていくと決めている。どんな形でもいい。そして、肩を回して姿勢を直した後、聞こえて来た会話に冷や汗が流れそうになった。佐久弥と並んで立ち、母のテンションが高くなっている。
「やっぱり実物の方がカッコいいですね~」
「そうですかー?よかったら自撮りをしませんか?」
「いいんですか?あの、妹が来ているんですけど。佐久弥さんのファンです。一緒に撮って頂いても構いませんか?外で待っています」
「おおー、喜んで!裕理、悠人。妹さんを呼んできてよー」
「自分で行け。悠人君、ここに居なさい」
「キャーーッ。喧嘩しないでください~」
いかにも楽しそうな母の様子を見て、良かったと思う反面、居心地の悪い思いをした。イケメン好きには変化がないことを思い知った。黒崎の送り迎えが始まったきっかけにもなったから、恥ずかしいと言うはやめておこうと思った。今だけは。
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