14-27

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 アンのクッション片付けていると、お義父さんと黒崎が笑いだした。楽しそうな雰囲気に引き寄せられて近くへ行くと、お義父さんがタブレット端末を持っていた。 「何か面白いものを見つけた?」 「ステージの写真が載っている。IKUのホームページだ」 「ええー、どれどれ?」 「これだ」 「ええ……」  今日のステージのものだ。2曲を演奏した後、メンバー全員で観客へ手を振っている。うちの応援団の写真と、恥ずかしがっている俺も掲載されている。ステージサイドへ逃走するシーンまである。うちわで顔を隠しながら。 「夏樹ちゃんらしいね。ははははー」 「いい写真だ。遠藤さんから動画を送ってもらえる。楽しみだ」 「見るなよーーっ」  さらにページを開くと、黒崎の顔が引きつった。俺としては気に入った写真だ。2曲目のバラードを歌う直前のものだ。うちわに貼り付けた黒崎の写真が鮮明に出ている。 「黒崎さーん。いい写真だね」 「うるさい」 「どうしてだよー?」 「それはこっちのセリフだ。応援団よりも、こっちの方が恥ずかしいだろうが」 「ううん?黒崎さんは俺のものだって知られるからいいんだよ!これで元デート相手が見ても、諦めてくれるよ~」  さっそく自分のスマホでもチェックしておく。さっと背後から取り上げられそうになって逃げ回り、とうとう家具に当たって涙がこぼれた。そして、黒崎から慰められながら、今日の一日分の、うれし涙を流した。
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