千夜くん、倒れるの続き

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俺はナイスアイデアだと思って言ったが、香澄の顔色は冴えねー。 香澄は財布の中身を全額はたいて粥を買ってくれたからだが、俺はそれを知る由もなかった。 「香澄?」 「…千夜くん、私もお粥にするわ」 そう言うと香澄は寝室を襖を閉めて出て行った。 俺、何か悪りー事、言ったか? そうは思ったが、当の香澄は受験勉強でも始めたのか、結局夕飯の時間まで寝室に来る事はなかった。 夕飯時。 香澄がさっきとは違う茶碗を持って寝室に入って来た。 「お待たせ、千夜くん。さっきとは違う味のお粥持ってきたわよ」 そう言って、空の茶碗と入れ替える香澄は、もういつもの香澄に戻っていた。 だからってわけでもねーが、俺もさっきの寿司云々の話は終わった事だと話題に出さなかった。 見ると今度は卵粥だ。 レトルトの味のバリエーションも増えてきたな。 美味さは手作りには劣るが、それでも需給は高いのかもしれねーな。 「サンキュー、香澄。悪りーな、色々と。受験勉強の方は順調か?」 「ええ!お陰様で。明日は2人で暖かい居間で千夜くんの手料理が食べたいわ」 香澄は俺の額に手を当てて、そう言い残して行った。 俺は甘えた様にねだった香澄が愛しくて仕方なかった。 夕飯を食った俺はまだ本調子じゃねーのもあって香澄が寝室に再び来たことにも気付かず眠っていた。
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