13人が本棚に入れています
本棚に追加
お互いどこかで気が動転していたみたい。
透明な袋に入ってるその殻付きのナッツが、マカダミアナッツではなくて、落花生だとは私も山村先輩も気付かなかった。
山村先輩が元の位置にキッチンチェアを置いてくれたところで私も流し台のスペースを空ける。
「…じゃ、じゃあ、先ずは板チョコが溶けやすくなる様に包丁で刻むけど…香澄ちゃんは危ないから隣で見てて?」
そう言うと山村先輩はトントントントンと手際良く板チョコレートを刻みだした。
凄い…スピードは速いのに、板チョコレートはきちんときめ細かく刻まれていく。
私のザク切りチョコレートとは訳が違うわ。
私はいつしか山村先輩の手元を見るのに夢中になっていた。
あっという間に、山村先輩はチョコレートを刻み終える。
「私にもこんな風に刻めるかしら…」
自信が無くなってきて私は小さくため息をついた。
山村先輩が私を安心される様に言う。
「始めはゆっくりで良いから、チョコレートに添える手は猫の手にするんだよう」
?猫の手??
古屋敷では猫は飼っていない。
猫は確かに可愛いけど、チョコレートに添えたら衛生的に良くないんじゃないかしら?
私がそう考えている内に、山村先輩は電気ケトルに水を入れると設置場所でスイッチを押す。
その間に流し台の下から、大小のボールをそれぞれ1つずつ取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!