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そして、軽く掻き回した後、雑巾を浸した。
香澄は裁縫以外、家事全般、出来ねーから料理も洗濯物を干すのも掃除も全部俺が2人分やっていた。
親父に勘当されて行く当ての無い俺を住まわせてくれてんだ。
これくらいの事は何てことは無い。
俺は雑巾を絞るとチョコレートを拭き取り始めた。
俺の為に手作りチョコレートを作ってくれようとしたのは嬉しい。
だが、料理もロクに出来ねー香澄がチョコレートを作ろうとすると、こうなるのか…。
それに、香澄の志望校、K大学の教育学部の受験はもう目の前に迫っている。
洗濯物が回り出した音を遠くで聞きながら、俺自身の気も遠くなりそうだった。
その時、ズボンのケツポケットに入れた携帯が、着信音を鳴らした。
そういや、そろそろグループ通話の時間だ。
グループ通話は、俺と香澄、後、親友の鈴木航(すずき わたる)と一応、1つ先輩の山村凌(やまむら りょう)の4人で話している。
山村は今は調理師の専門学校に通ってるから、学園では会わねーが、1年の途中まで俺は料理部に入っていたから山村とはそこで出会った。
俺は手を止める訳にはいかねーから、携帯を取り出すとスピーカーにして、調理台の上に置いた。
「もしもし」
『はい、もしもし、こんばんは。グループ通話のお時間です』
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