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2人きりの空間
「待った?」
「いんや、大して待ってねー。鈴木への友チョコでも買って帰るか?」
「それが…私今、金欠で…。受験勉強でバイトも辞めちゃったし…。明日になれば仕送りが届くと思うんだけど…」
俺は一昨日、寿司を頼もうと言った時の香澄の様子がおかしかった理由が、ようやくわかった様な気がした。
俺は大分冷めてきたコーヒーをとっとと飲み干すと立ち上がった。
ま、友チョコレートは14日までに渡せりゃいいから仕送り金を待つのも一つの手だ。
「じゃあ、帰るか」
「ええ!今日の夕ご飯はなあに?」
「冷蔵庫に残っているもんで考えるさ。それと、チョコレート作りや俺への看病を頑張った香澄への褒美があるぜ」
山村ん家で調達したんだろ。
香澄はおそらく俺への手作りチョコレートが入っていると思われる赤い紙バッグを持っている。
俺と香澄は揃ってコンビニから出た。
「私へのご褒美ってなあに?」
「帰ってからのお楽しみだ。香澄、ほらメット」
俺は被って来たメットを香澄に渡すと、バイクに跨った。
香澄が未だに慣れない手付きでメットを被ると、紙バッグを抱えながら、俺にしがみついた。
俺は風を起こすと寒いのと、紙バッグを香澄が落とさねー様に安全運転で古屋敷を目指した。
「あー!私の好きなチーズケーキ!千夜くんの言っていたご褒美って、これの事?」
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